都市型シニア、消費は現役(消費分析)
シニアコミュニケーション会長山崎伸治氏――都市型シニア、消費は現役(消費分析)
掲載日:2005/04/27 媒体:日経流通新聞MJ,2面
日本の成人人口の過半数を五十代以上が占め、「シニアマーケット」が改めて注目されている。その中でも消費者
として魅力的な存在が、情報感度が高く、都市部でアクティブな生活をおくる「都市型シニア」だ。この層にいかにアプローチするか、調査・分析を重ねていく
と、「夫婦の距離感」が一つのキーワードとして浮かびあがってくる。
二〇〇七年にはこれまで日本の消費のけん引役だった団塊世代がリタイアする
六十歳に達し始める。各企業ともにシニア層を重要な消費者として見直していこうという流れが加速している。しかし、注意すべきは、シニアマーケットを単な
る「年寄り」マーケットとして単純化して理解しないことである。
私はこれまで五十代以上向けに、千六百を超える定量調査、定性調査を行ってきた。その中で強く感じるのはシニアマーケットという漠とした同質マーケットは存在しないということだ。
「ヤングマーケット」とひとくくりにすることに抵抗がある人でも、ことシニアになると「シニアマーケット」というひとつのカテゴリーがあり、特有の成功法則があるように誤解してしまう。
本当に必要なのはシニアの中のどんな人を自分たちは対象として考えるかということである。
住宅ローンが終わったり、子供が独立したりして「家族形成期」を抜け出していく。家の中には必要なものはほとんどそろい、家族が減っているので量は必要な
い。消費の傾向は「自分の価値基準に合ったいいものを選択的に」。消費に慣れた今のシニア世代が新たなライフステージにさしかかっているので、消費市場に
非常に大きなインパクトが出てきている。
本来シニアへのアプローチには、細かなセグメンテーションやターゲティングが必要だが、今回はその中でも特に消費者として魅力的な「都市型シニア」について論じたい。「都市型シニア」とは、情報感度も高く都市部でアクティブな消費生活を送る豊かな消費者である。
シニアコミュニケーション社の調査では都市型シニアのインターネットユーザー比率は五十代以上で約五五%。好きな音楽は演歌でなくJポップ、クラシックで
ある。好みの外食のジャンルは寿司・中華・イタリアン。今後行って見たいスポットはとげぬき地蔵より東京ディズニーランドや六本木ヒルズ――。都市型シニ
アは消費に対する考え方もこれまでのシニアとは大きく違う。
これまでのシニア層が、資産を子供たちに残すことを第一に考えてきたのに比べ、最近
の、特に都市型シニアは、自分の最後の葬式代や介護にかかる費用を除いては、自分の為の消費や投資に使ってしまおうと考える。子供に迷惑をかけたくないと
いう意識が強迫観念に近いくらい強く、子供との同居を求める人も二割程度しかいない。
消費の方向性としては子供や孫と行く旅行の代金を払ったり、子供世帯が購入するキャンピングカーの代金の一部を負担したりする。死んだ後に相続の形で家や資産を残すよりも、生きている間に一緒に何かを楽しむためにお金を使う「生前贈与」的な資産移転を望んでいる。
こうした都市型シニアへのアプローチで重要な切り口は何か。それは「夫婦の距離感」である。
夫のリタイアを前に、妻は「夫との時間をどう過ごすか」という事が非常に大きなテーマとなる。今まで自分の城であったリビングに夫がいつもいる生活。寝室を夫婦別にして「夫からのシェルター」がわりに自分の寝室を使う妻が増える。
夫との距離感を大事にする為、対面型のキッチンにリフォームしたり、夫が料理を作れるよう高さ調節ができるキッチンにしたりする。夫は会社というよりどころを失い「妻への片想い」状態になる一方、妻は夫に自立を促すようになる。
こうした「夫婦の距離感」を意識して都市型シニアにアプローチすると新たな展開ができるのではないか。たとえば夫のニーズとしての「妻との距離を縮める商
品・サービス」、妻のニーズとしての「夫から解放される・夫を自立させる商品・サービス」など、切り口を変えるだけでマーケティングメッセージも変わって
くるように思われる。
「都市型シニア」は見る目が厳しく難しいが非常に魅力ある消費者である。小手先の対応だけでは見破られてしまうのでまじめ
にしっかりとポイントを押さえたアプローチをすることが重要である。拙著「『都市型シニア』マーケットを狙え!」(日本経済新聞社)は都市型シニアについ
て詳細に触れている。更なる理解の一助となれば幸いである。
(シニアコミュニケーション会長 山崎伸治)

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